白木原・大野城エリアガイドSHIRAKIBARU/ONOJO AREAGUIDE

西鉄線の高架下で拓く、「歩きたくなるまちづくり」について聞きました/大野城市連立・高架下活用推進課・マドカナプロジェクト

福岡県大野城市では、西鉄天神大牟田線の高架化工事が完了し、その高架下空間を活用した新たなまちづくりが本格的に進行している。民間事業者である「マドカナプロジェクト」と大野城市が連携し、「未来をひらく賑わいと安らぎのコミュニティ都市」の実現を目指して複合施設や広場の整備、歩行者中心の快適な空間創出に取り組んでいるという。今回は、高架下空間を活用したまちづくりの背景や、高架下の整備によって新たに生まれる施設やコミュニティなどについて、大野城市役所とマドカナプロジェクトの担当者からお話を伺った。

西鉄天神大牟田線高架下のイメージイラスト
西鉄天神大牟田線高架下のイメージイラスト

40年越しの夢がカタチに──高架下が生まれ変わる、大野城市の新しいまちづくり

「大野城市役所」
「大野城市役所」

――まずは、「春日原」駅~「下大利」駅間の連続立体高架化事業と、高架下利用計画の概要や経緯などを教えてください。

連立・高架下活用推進課:西鉄とJRの線路が近接している大野城市では、高架化前には市内12か所の踏切が1時間あたり35~40分ほど遮断されており、交通渋滞が深刻な課題でした。1989(平成元)年に策定された都市計画マスタープラン内で西鉄線の高架化の必要性が示されたことを皮切りに、高架化工事が約40年にわたって段階的に進められてきました。

本格的な工事は2011(平成23)年4月に始まり、大野城市内では約3.3kmにわたって高架化工事が進行。2022(令和4)年には列車の運行が高架に切り替えられ、2024(令和6)年に全事業が完了しました。

高架化によって踏切が解消されたことで、交通の流れが大きく改善。市民生活に大きな効果をもたらしています。

2022(令和4)年に高架化された「白木原」駅
2022(令和4)年に高架化された「白木原」駅

連立・高架下活用推進課:高架下の活用については「マドカナプロジェクト」を事業者として選定し、2024(令和6)年度から2026(令和8)年度にかけて設計・工事を進めています。その基本コンセプトは、国土交通省が推進する「街中ウォーカブル」事業を活用した「居心地が良くて歩きたくなるような街づくり」です。

重要な点として、高架下の土地は西日本鉄道株式会社(西鉄)が所有者であり、市は西鉄から土地を借りて整備を進めています。また、西鉄とも協力しながら「高架下利用推進協議会」を組織し、街づくり会議やワークショップなどを通じて地域住民の方とも協議を重ねながら利用計画を作ってきました。

地域の方とのワークショップの様子
地域の方とのワークショップの様子

“にぎわい”と“やすらぎ”が交わる場所へ──高架下に込めたまちの理想

――コンセプトとして『未来をひらくにぎわいとやすらぎのコミュニティ都市を実現する高架下』を掲げていますが、コンセプトに込めた想いを教えてください。

連立・高架下活用推進課:このコンセプトは、大野城市の最上位計画である「大野城市総合計画」のコンセプト「未来をひらくにぎわいとやすらぎのコミュニティ都市」に基づいています。

事業コンセプト
事業コンセプト

高架下整備の目的は、大きく分けて以下の2点です。

1.高架下空間が“にぎわい”と“やすらぎ”の軸となり、そこから周辺地域へ交流が波及すること。
高架化によって分断されていた地域が繋がり、新たな交流が生まれることを期待しています。また、多様な人々の交流が中心となり、それが街全体に広がっていくことを目指しています。

2.質の高い空間(高質空間)を創出し、沿線の街の価値やブランディングを高めること。
市役所が建てる一般的な公共施設とは異なり、デザインにこだわった質の高い公共空間を創出し、新たな価値を生み出すことを目指しています。これにより、沿線地域のブランドイメージを向上させたいと考えています。

高架化により市の東西を自由に行き来しやすくなったことに加え、マドカナプロジェクトの取り組みによって、地域交流がさらに促進されることが期待されています。

学び・育ち・集いが生まれる場所へ──複合施設と広場が描く交流のカタチ

――このコンセプトを4つに細分化した機能についてお伺いします。「交流を育むまち」を生み出すうえで、イベントなどにも活用できる空間の整備が進んでいるとのことですが、現時点での具体的な整備状況はいかがでしょうか。また、「将来的にどのような活用方法を検討されているか」「具体的にどのような取り組みで交流を育むか」についても、教えてください。

マドカナプロジェクト担当者:「交流を育むまち」の主要な施設として、「下大利」駅近くに複合施設が建設される予定です。

この複合施設は、勉強ができるスペースをはじめ、カフェやキッズスペースなどを設けるために動いています。地域コミュニティの場として利用するだけでなく、子育て世代がカフェで過ごせるようになることで、子ども同士や親同士の交流が生まれる場となることを目指しています。

「下大利」駅近くに建設予定の複合施設
「下大利」駅近くに建設予定の複合施設

さらに、この建物の前には「大屋根広場」という大きな屋根付きのイベントスペースが整備されます。複合施設とこの広場を一体的に利用することで、地域のお祭りとの連携や、子育て向けのイベントなど、様々な規模や内容のイベントを開催できる計画です。

マドカナプロジェクトは、DBO事業(デザイン・ビルド・オペレート)として、設計(デザイン)、建設(ビルド)、そして完成後の運営・管理(オペレート)までを一貫して担います。そのため、完成後のイベント企画や賑わいづくりといったソフト面も、民間事業者のノウハウを活かして運営していく予定です。市が一方的に企画するのではなく、地域住民が主体的に「こんなことをしたい」という意見を吸い上げ、実現できるような賑わいづくりを目指しています。

市民が自由に学びあえる空間づくり

――「学びを深めるまち」として、市民の学びを応援する場や子どもたちが自由に活動できる場をつくることを掲げられていますが、現時点での整備状況はいかがでしょうか。また検討している活用方法や具体的な活用シーンのイメージなどを教えてください。

マドカナプロジェクト担当者:複合施設の建設は2025(令和7)年度の7月以降から約13ヶ月間を要する見込みです。

「学びを深めるまち」においては、複合施設内に学習スペースや、会議スペース「スタジオ」が整備される予定です。この会議スペースの名称「スタジオ」は、市民の方々とのワークショップを3回開催した中で、「会議スペース」では堅苦しいという意見が多数寄せられ「もっと若い人が気軽に使いやすい名前にしてほしい」という声を受けて決定したものです。

ワークショップでは住民の方からさまざまな意見が挙げられた
ワークショップでは住民の方からさまざまな意見が挙げられた

マドカナプロジェクト担当者:「スタジオ」という名称にしたことで、単なる会議だけでなく、学生のダンス練習など幅広い活動に利用できるような、より自由な発想での活用が期待されています。あらゆる世代の市民が、この空間を通じて学び、交流を深めることを目指しています。

誰もが歩きやすい“まちの回遊路”を整備中

――残り2つの項目として「移動が快適なまち」「歩くことを楽しむまち」と、つい出かけたくなるような街づくりを進められていますね。回遊性を高めるモビリティ施策も検討されているとのことですが、現時点で思い描く将来像や、周辺住民の方への利便性の面でのメリットなど、具体的な利用シーンなど踏まえて教えていただきたいです。

連立・高架下活用推進課:「移動が快適なまち」の主要な取り組みとして、「白木原」駅東口から「下大利」駅までの間に、幅10mの「広幅員歩道」を整備します。

これから整備される「白木原」駅前の「広幅員歩道」
これから整備される「白木原」駅前の「広幅員歩道」

連立・高架下活用推進課:「春日原」駅から「白木原」駅までの区間では高架構造物が屋根代わりになる一方、高架沿いを通る「白木原」駅から「下大利」駅までの区間にも、約3m幅の歩行者シェルター(屋根)が設置されます。これにより、雨の日でも傘をささずに快適に歩行でき、車椅子やベビーカーを利用する方も安心して移動可能です。

歩道や広場のイメージ
歩道や広場のイメージ

連立・高架下活用推進課:さらに、この高架下の歩道は、かつての東西分断を解消し、よりスムーズな回遊性を生み出すために、あえて「ジグザグ」に設計されています。これは、西鉄が開発する部分と市が開発する部分が混在しており、それぞれの開発区間が組み合わさることで、一体的で楽しい空間となることを意図しています。

「ジグザグ」に整備される遊歩道のイメージ
「ジグザグ」に整備される遊歩道のイメージ

連立・高架下活用推進課:モビリティ施策については、今年度からシェアサイクルの導入実証実験が行われる予定です。また、「春日原」駅、「白木原」駅、「下大利」駅周辺に合計5か所の駐輪場を整備し、自転車の利便性向上を目指しています。

「白木原」駅南側駐輪場の整備イメージ
「白木原」駅南側駐輪場の整備イメージ

――2022(令和4)年8月の高架化完了以降、自治体と西日本鉄道、高架下の整備・運営を担う「マドカナプロジェクト」などが連携し、街づくりが進行しているかと思います。最終的な事業の完了予定はいかがでしょうか?直近で完成する施設などもあれば教えてください。

連立・高架下活用推進課:大野城市が行う高架下の整備事業は2026(令和8)年度末に完了予定です。西鉄が所有し開発を進める区間はその後の整備となるため、高架下全体の整備完了までは、もう少し時間がかかる見込みです。

整備が進む高架下
整備が進む高架下

少しずつカタチになる新しい暮らし──高架下整備のこれからと期待の声

――最終的に事業が完了したら、現在の生活環境からどのような変化が生まれるのでしょうか。具体的におしえていただきたいです。

マドカナプロジェクト担当者:事業完了後には、整備される複合施設が地域のコミュニティの核となり、世代を超えた多様な人々の交流が生まれることが期待されます。子育て世代からシニア層、高校生まで、あらゆる市民が集まることができる場所となるでしょう。

また、これまで踏切によって東西に分断されていた地域間を自由に行き来できるようになることで、地域全体の交流が活発化し、地域の一体感が醸成されます。

さらに、民間の「マドカナプロジェクト」のノウハウを活用することで、住民が主体的に使いやすいと感じられる施設や空間となることを目指しています。

高架下利用基本計画(令和2年9月策定)に掲載されている街の機能イメージ
高架下利用基本計画(令和2年9月策定)に掲載されている街の機能イメージ

――高架化された線路下の利用に関して、お近くに住まわれている方からは、どのような声が挙がっていますか?

連立・高架下活用推進課:この計画は、これまで市民の方々とともに作ってきたものということもあり、多くの期待の声が上がっています。長年の事業であったため、「やっと完成するんだね」と、完成を心待ちにする声は多い印象です。実際に昨年、高架下の活用に向けた実証実験として、フリーマーケットや猫の譲渡会などを行った際に、みなさんが主体的に使ってくださっており、「高架下空間を使ってみたい」という意欲がこちらに伝わってきています。

――エリア周辺の魅力やファミリーにおすすめのスポットなどがあれば、ぜひ教えてください。

マドカナプロジェクト担当者:「白木原」駅から徒歩5分ほどの場所には、「豆香洞コーヒー 白木原本店」があります。近年、天神の商業施設にも出店した人気店で、地域の人々に長く愛されているお店です。テイクアウトも可能なので、ぜひ立ち寄ってみてほしいです。

豆香洞コーヒー 白木原本店(とうかどう)
豆香洞コーヒー 白木原本店(とうかどう)

――最後に、今後このエリアに住むことを考えている方に向けて、メッセージをお願いします。

マドカナプロジェクト担当者:天神エリアや博多エリアへのダブルアクセスが可能な大野城市は、交通の便の良さが魅力です。高架下での整備が進むことで、そこに住む方々の生活がさらに充実することが期待されています。

連立・高架下活用推進課:2025(令和7)年度からの2年間で、沿線の街の姿は大きく変わります。市はマドカナプロジェクトと協力し、誰もが「歩きたくなる、居心地の良い街づくり」のために一生懸命取り組んでいます。完成までもう少し時間がかかりますが、この地域はきっと楽しく魅力的な街になるので、ぜひ期待していてほしいです。新しい街の姿を見に、ぜひ一度足を運んでみてください。

取材風景(奥:連立・高架下活用推進課担当者さま、手前:マドカナプロジェクト担当者さま)
取材風景(奥:連立・高架下活用推進課担当者さま、手前:マドカナプロジェクト担当者さま)

「大野城市役所」
「大野城市役所」

大野城市 都市整備部 連立・高架下活用推進課

所在地:福岡県大野城市曙町2-2-1
電話番号:092-580-1967
FAX:092-572-8432
メールアドレス:renritsu@city.onojo.fukuoka.jp
業務内容:西鉄天神大牟田線連続立体交差事業、高架下利用計画の策定
URL:https://www.city.onojo.fukuoka.jp/s096/organization/20220822130121.html
※この情報は2025(令和7)年6月時点のものです。
※記事内のイラストはあくまでイメージであり、実際に出来上がる施設とは異なる可能性がございます。

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