スペシャルインタビュー

ひとりひとりの子どものリズムに合わせた「流れるような」保育で自主性をはぐくむ「高宮くすくすの丘保育園」

博多と天神まで電車やバスで一本、と都心までのアクセスがいい高宮エリア。その高台に位置する地で樹齢100年(推定)の「くすの木」をシンボルツリーに、家庭のような温かな環境で保育をする福岡市の認可保育所「高宮くすくすの丘保育園」がある。今回は、園長の村上先生に、園の保育方針や特徴的な活動、そして高宮の魅力について伺った。

「保育園の外観」
「保育園の外観」

人と環境すべてにおいて、子育て意識の高い街

――まず初めに、高宮の街の魅力についてお聞かせください。

村上先生:高宮は南区の北部に位置し中央区との境になっており、博多や天神までのアクセスがとても良い地域です。電車を乗り継げば、福岡空港までもすぐに着きます。働くお父さん・お母さんも便利が良いでしょう。同時に、周囲には上水公園や野間大池公園など大小様々な公園がある緑豊かな地域で、飲食店や雑貨店、おしゃれなカフェ、おいしいパン屋さんもあります。

――高宮の子育て環境はいかがでしょうか。

村上先生:公立小中学校をはじめ、県内でも有数の進学校でもある福岡県立筑紫丘高校があり、乳幼児スクールや文化施設などの施設も充実していて、文教地区として教育環境が整っています。保護者の教育に対する意識が高い地域なので、質の高い子育てができるのではと思います。
地域行事に熱心な地域でもあります。子ども会やシニアクラブなどの公民館活動が充実していて、横のつながりがしっかりとしている印象です。とくに驚くのが運動会。すごい人数が集まり、各町内会ごとに独自ユニフォームを制作するほど、皆さんとにかく熱いんです。高宮は都会なのに人が温かく、地域全体で子育てができる子育て世帯に優しい街です。

緑の多い園庭で遊ぶ子どもたち
緑の多い園庭で遊ぶ子どもたち

保育者と子どもの「信頼関係」を第一にする保育

――恵まれた環境ですね。こちらの保育園について概要よりお聞かせください。

村上先生:当園は2014年(平成26年)12月1日に開園しました。高宮の街を一望できる小高い丘の上、樹齢100年以上と言われるシンボルツリー「くすの木」が子どもたちを見守る地にあります。3階建ての施設内には0歳が1クラス、1・2歳児は2クラス(縦割り)、3・4・5歳児は2クラス(縦割り)あります。なお、定員数は0歳児が12名、1歳児は18名、2歳児以上は各20名の合計110名(現在は114名在籍)。職員は総勢31名で、そのうち保育士(非常勤を含む)は22名在籍しています。

事務作業中の園長先生
事務作業中の園長先生

――園の保育方針についても教えてください。

村上先生:当園の理念は「全ての子どもたちに、温かな、心地よい育ちの場を提供する」ことです。具体的には、家庭的な温かさで、一人ひとりを大切にする保育を目指しています。そこで基本となるのが、保育者と子どもが「信頼関係」を築くことです。とくに保育では0歳児がとても重要だと考えており、保育者と子どもがしっかりと向き合えるよう「担当制」を採用しています。なお、1歳児から縦割り保育になりますが、年齢に応じて緩やかな担当制は続けつつ、少しずつ他の保育者や子どもと関わる機会を増やすことで世界を広げていくわけです。

0歳児クラス
0歳児クラス

また、当園ではひとりひとりの子どものリズムを知り、日課を読み取り、それに合わせて保育者が援助する保育を心がけています。ご家庭によって、子どもによって食事や睡眠などの生活スタイルは様々ななか、同じ時間に食べさせようとしても、眠らせようとしても上手くはいきません。例えば、朝早くに登園してくる子どもから食事して、そして眠りにつく。その子のリズムに合わせた流れを作ることで、子どもに無理をさせない「流れるような」保育ができるわけです。そうすることで、子どもはしだいに「次は自分の番だな」と理解してくれて、保育者が大きな声で呼び掛けなくても、自ら考えて動けるようになります。

3・4・5歳児クラス
3・4・5歳児クラス

最近は核家族や一人っ子のご家庭が多いことから、異年齢と関わることができる「縦割り保育」も大切にしています。1・2歳児、3・4・5歳児と異なる年齢の子が一緒の空間で生活することで、下の子は年長児のお兄さん・お姉さんに憧れて「やりたい!」と意欲的に生活するようになりますし、上の子は年少児を労る気持ちが自然と育つのです。ただ、遊びや食事、睡眠など生活の基本は縦割りですが、曜日や時間によっては同じ年齢の子だけで活動する「横割り保育」もあります。発達によってできること、活動量はどうしても差があるためです。

木漏れ日の降り注ぐ園庭
木漏れ日の降り注ぐ園庭

「日常」に丁寧に関わる

――園で力を入れている取り組みは何ですか。

村上先生:行事は運動会や発表会などごく一般的なものは行っていますが、それよりも、日常を大切にしています。挨拶や身辺の整理、食事、排せつ、睡眠をはじめ、保育者の声かけに対する反応、子ども同士のやり取りなど基本的な生活習慣が身につくように日々の関わりを大切にしているためです。たとえば喧嘩が起きた時に、ただ「ごめんね」「いいよ」で簡単に終わらせるのではなく、保育者が子どもの話をしっかりと聞いて、その裏にある子どもの気持ちを汲み取り、代弁する。「こんな気持ちだったんだって」と丁寧に関わる。それは行事などよりも、ずっと大切なことでしょう。

冒険心をくすぐる複合遊具
冒険心をくすぐる複合遊具

――園ならではの施設、設備はありますか。

村上先生:0歳児と1・2歳児のクラスには、裸足保育のために床暖房を設置しています。玄関ホールには、アロマディフューザーを導入していて、午前と午後に香りが流れるようにしているのも特徴です。保育園と言うと、どこか病院のような消毒液の匂いをイメージされがちですが、当園はアロマの香りで癒されると保護者からご好評いただいています。

木の温もりを感じる空間
木の温もりを感じる空間

また、園舎は木などの自然素材を使用し、木の温もりを大切にする意味で、おもちゃはヨーロッパ製のものが多くあります。机や椅子、キッチンやドレッサーなどは、子どもの成長に合わせてオーダーしたもので、年齢に応じて少しずつ高さを変えています。

当園ならではの設備として、保育室の前には「準備室」を設けています。その日の準備物を置いて、使用済みのものを受け取れるようにしている空間です。保護者が室内に立ち入らないので他の子どもの集中が途切れませんし、感染予防にもなります。

「あそび」ながら自然と学べる体験活動が豊富

――専任教員による保育があると伺いました。

村上先生:2歳児から「英語であそぼう」、3歳児から「音楽であそぼう」、4歳児から「スイミングであそぼう」、5歳児から「文字であそぼう」の計4つの活動をしています。例えば、「文字であそぼう」は点線に沿って線や丸をグジュグジュとなぞるところから始まり、文字に興味を持ってもらい、小学校にあがるまでには自分の名前が書けるようになることを目指すものです。なお、すべてに「あそぼう」と付けているのは、園の方針として「無理強いをしない」ことを掲げており、子どもが楽しみながら英語や音楽に親しむ活動のためです。その日の気分によっては子どもが選択し、いつもの遊びをすることもできます。スイミングだけは園外活動なのでお月謝が発生するため任意で行っていますが、ほぼ全員参加しています。

――地域活動に参加されていたりしますか。

村上先生:今はコロナの影響でできていませんが、これまでは西高宮校区のシニアクラブと交流会をしていました。園に来てもらうのと、公民館などに出向くのとで、年に2回ほど。シニアの方に昔遊びを教えてもらったら、お返しに子どもたちが踊りや歌をプレゼントする感じです。また、夏祭りや運動会など地域行事に参加することもあります。

園の事務室にて
園の事務室にて

園長先生が目指す、あるべき保育のカタチとは

――保育者は子どもとの関わりで何を大切にしていますか。

村上先生:先ほどもお伝えした通り、子ども一人ひとりを大切にすることが第一です。子どもの生活が「流れるように」、保育者と子どもが愛着を形成して信頼関係を築けるように、そして少しずつ子どもの世界を広げてあげられればと思います。あくまでも園では子どもが主役で、私たち保育者は援助をする側です。「並んで!」「集まって!」と全体に向けて指示するのではなく、用事があるのなら保育者がその子の側までいって、腰を低くして、目線を合わせて声をかける。基本的なことですが、当園では職員全員に徹底しています。

給食の様子
給食の様子

――子どもにはどのような大人に育って欲しいですか。

村上先生:園庭の「大きなくすの木」がどうして100年もの間倒れずにいるのか。 それは、目には見えない地面の下にしっかりと根を張っているからです。 この根っこの部分は、人間に例えると0歳から6歳までの乳幼児期にあたります。この大切な時期に大人がしっかりと子どもと向き合い、子どもの要求や期待にどれだけ応えてあげることができるかで、子どもたちのその後の人格形成に大きく影響すると言われています。日々の生活の中で、大人からの愛情をたっぷりと受けた子どもは、やがて自発的に活動できるようになります。乳幼児期は、絶対に取り返せない時期だからこそ保育園と家庭が一体となって子どもたちの育ちを支え世界に大きく羽ばたける大人に育ってほしいと思います。

シンボルツリーの「くすの木」
シンボルツリーの「くすの木」

「保育園の外観」
「保育園の外観」

高宮くすくすの丘保育園

園長 村上千津 先生
所在地 :福岡県福岡市南区高宮4丁目19番地35号
電話番号:092-406-2764
URL:http://www.kusukusu-hoikuen.com
※この情報は2021(令和3)年6月時点のものです。