「照葉小学校・中学校」「照葉北小学校」合同インタビュー

「小中連携教育」で児童・生徒の他者を思いやる心と、自立心をはぐくむ

ここ数年、大規模な開発が進められている「香椎照葉」エリア。福岡県内外から多くの移住者が集まるこのエリアでは児童・生徒の数もまた急速に膨れており、小学校や中学校など教育機関の役割が増しています。今回は、「福岡市立照葉小学校・中学校」校長の殿元(とのもと)先生と、「福岡市立照葉北小学校」校長の隈本(くまもと)先生に、各校ならではの取り組みや、両校の連携教育、地域との関わりなどについてお話を伺いました。

「照葉小学校・中学校」の校長室にて
「照葉小学校・中学校」の校長室にて

「連絡通路」で行き来できる両校

――各校のクラス数や児童数について教えてください。

「照葉小学校・中学校」校長 殿元先生: 「照葉小学校」は平成19(2007)年4月1日、「照葉中学校」は平成20(2008)年4月1日に開校しました。そしてクラス数(学級)や児童数についてですが、令和2(2020)年6月時点で、小学校は28学級で795名の児童、中学校は16学級で560名の生徒が在籍しています。

「照葉北小学校」校長 隈本先生: 「照葉北小学校」は地域の大規模な住宅開発にともない、「照葉小学校」の児童数が大幅に増加したことを受けまして、平成31(2019)年4月1日に開校しました。新設されたばかりの学校ですが、令和2(2020)年6月時点ですでに26学級、757名の児童が在籍しています。

――各校で特徴的な施設や設備はありますか?

殿元先生:照葉小学校」と「照葉中学校」は校舎が一体型で、小学生も中学生も同じ施設内で生活しているのが大きな特徴です。小学生ゾーン、中学生ゾーンと、基本となる生活空間は別れてはいますが、「メディアフォーラム」(図書館)や「大アリーナ」「小アリーナ」(体育館)は共通で利用し、また、ゾーンを越えて設置されている特別教室もあるため、小学生が中学生ゾーンに、中学生が小学生ゾーンにと互いに行き来することはよくあります。

両校をつなぐ連絡通路
両校をつなぐ連絡通路

隈本先生: 「照葉北小学校」のみの設備ではないのですが、「照葉小学校・中学校」の校舎とは道路を隔てた連絡通路(渡り廊下)で繋がっていて、必要に応じて児童・生徒が互いに行き来できるようになっています。異なる学校と連絡通路で繋がるというのは全国的にも珍しいものです。

保護者にも支持される、「連携教育」の魅力とは

――各校ならではの教育活動、取り組みをお聞かせください。

殿元先生: 「照葉小学校」と「照葉中学校」ではこれまで「小中連携教育」を大きな柱としてきました。例えば、小学校ゾーンから中学校ゾーンまでをひとつの清掃区域として位置づけ、毎日の清掃活動では小学1年生から中学3年生までが互いに協力をして「縦割り清掃」をしています。

「照葉北小学校」の教室
「照葉北小学校」の教室

隈本先生: 「照葉北小学校」では開校当初から、多くの保護者に「照葉小学校・中学校」と同じ方向性の教育をしてほしい」と強くご要望をいただいてきました。そこで「照葉北小学校」でも、「照葉中学校」の生徒に来てもらうなどして、「縦割り清掃」など、できうる範囲での連携教育を実施しています。

隈本先生: また、もともとはひとつの学校であった関係から、「照葉小学校」と「照葉北小学校」では「小小連携教育」にも取り組んでいます。例えば、5年生は宿泊を伴う自然教室を合同で行ったり、各学年ごとに学習発表会を開いたりなどです。「小中連携教育」は他の地域、学校でもされていることですが、別々の小学校がここまで連携できているのは照葉ならではでしょう。

――「連携教育」はどのような面でメリットがあるとお考えですか?

「照葉小学校・中学校」校長の殿元先生
「照葉小学校・中学校」校長の殿元先生

殿元先生: 「連携教育」は児童・生徒の心の成長にとてもいい影響があると考えています。小学生だけ、中学生だけのように同じ年齢の友達同士で生活しているとどうしても気が緩みやすくなるわけです。その点、照葉のように小学生と中学生が同じ空間にいると、中学生はお兄さん、お姉さんとしての自覚を持ちやすくなりますし、反対に小学生は中学生のお兄さん、お姉さんを見習って行動するようになり、自然と児童・生徒の心を成長させてくれているように感じます

隈本先生: 「連携教育」をしていることもあり児童・生徒は落ち着いて生活できているのかなと思います。実際に保護者から「ここなら安心して預けられる」とご評価いただくことも多いですし、中には「ここで子どもを学ばせたいから、照葉に引っ越しました」という方もいるほどです。

方向性は同じでも、それぞれ特色をもつ教育内容

――「照葉小学校・中学校」として力を入れている指導などはありますか?

殿元先生: 他者を思いやれる児童・生徒の育成にはとくに力を入れています。そのための指導としてはいくつかありますが、特徴的なものでは「無言移動」です。「照葉小学校」と「照葉中学校」では時間軸が異なるため、チャイムは鳴らしていません。授業によっては小学生が中学生ゾーンに、中学生が小学生ゾーンにと相手の生活空間を通ることがよくあるわけですが、その際には相手への思いやり、気配りの心をもち私語などはせず静かに移動するように指導しています

静かに移動する児童たち(照葉小学校・中学校)
静かに移動する児童たち(照葉小学校・中学校)

隈本先生: 見学いただけると分かりますが、本当に「シーン」と誰1人としてしゃべっていません。無言移動を謳っている学校は全国にありますが、実施できている学校というのはあまりないもので、「照葉小学校」や「照葉中学校」のようにそれが実施されているのはすごいことです。その素地があるからか、「照葉小学校」から分かれた「照葉北小学校」でも同じように実施できています。

――「照葉北小学校」ならではの取り組みというのはありますか?

隈本先生: 先ほどもお伝えしたように多くの保護者からの強いご要望もあり、基本的には「照葉小学校」と同じ方向性での教育をしています。そのため、校訓や校歌も「照葉小学校」と同じものです。しかし、あくまで別の小学校にはなりますので、まったく同じというものではありません

広々として明るい階段教室(照葉北小学校)
広々として明るい階段教室(照葉北小学校)

隈本先生: 例えば、縦割り清掃であっても「照葉中学校」の生徒には来てもらっていますが、「照葉小学校」の児童が来ることはないです。ただ、その代わりというわけではないですが、「照葉北小学校」では6年生が最上級生として様々な活躍の場を見つけてあげられるのかなと思っています。「照葉小学校」と「照葉中学校」をモデルケースとして、いい部分だけを上手に取り入れていきたいです。

地域とも連携の強化も目指す

――今後、特に取り組みたい活動がありましたら教えてください。

殿元先生: 近年、教育が根本的に変化してきました。これからはICT活用が活発になるので、その辺りは乗り遅れないように対応したいと考えています。また、今までもそうですが、運動会・体育祭や、学習発表会・合唱コンクールなど、児童・生徒が本気になれる行事にこれからも力を入れていきたいです。

隈本先生: 北校区を含め、照葉全体で開発が進められて児童・生徒がとても増えてきています。「照葉北小学校」としては、今後も「照葉小学校」「照葉中学校」との連携を柱にした教育を続けますが、街の発展に合わせて地域との連携を強化していくなど、柔軟な学校運営をしていきたいです。

「照葉北小学校」校長の隈本先生
「照葉北小学校」校長の隈本先生

隈本先生: 「照葉小学校・中学校」と「照葉北小学校」は、特に同学年の先生方がしっかりと連携がとれていないと、ここでは学校運営にどうしても支障が出てきます。児童・生徒が家に、地域に帰ればどちらの学校か、というのは関係ありません。両校の児童が同じ公園で遊ぶ、というのは珍しくない光景ですし、必然的に両校の保護者同士も距離が近くなります。

殿元先生: そのため、学校として何かのお知らせの際には、両校で内容や発表時期を揃えてといった配慮をしています。また、昨年は両校で授業参観日が同日だったのですが、兄弟が「照葉中学校」と「照葉北小学校」に通われている保護者が移動しやすいよう連絡通路を開放したりもしました。

発展・進化しているからこその魅力もある街「香椎照葉」

――「香椎照葉」という街の特徴を活かした活動はありますか?

殿元先生: 学習のなかで、低学年が地域の老人会と交流したりします。また、大規模な地震や津波を想定して、保育園や幼稚園と合同で防災訓練を行っています。ただ、街自体がまだできたばかりで、発展途上ということもあり、学校として地域との連携は模索している段階です。

隈本先生: 今年は、2年生が新しくできた商業施設「island eye」に、3年生がスーパーマーケットの見学に行ったりしました。また、すぐそばに「福岡市総合体育館 照葉積水ハウスアリーナ」があるので、何かに活用できないかな、と考えています。日々発展をしている街ですから、地域との連携もまさにこれからでしょう。

「香椎照葉」の都市計画模型の前にて(照葉小学校・中学校)
「香椎照葉」の都市計画模型の前にて(照葉小学校・中学校)

――「香椎照葉」ならではの魅力について教えてください。

殿元先生: 照葉でも地域で祭りなどが催されることがあります。その際、運営委員の方が学校にテントなどを借りに来られるわけですが、とにかく若い。それこそ小学生のお父さん、お母さんというのも普通にいらっしゃるので動きも良く、活気があるな、と感じています。

隈本先生: 開発は自然と共有、共存しながら進められています。すでに大規模な中央公園もあり、さらに今後は自然観察公園と野鳥公園もできます。開発といってもすべてを便利にしてしまうのではなく、あえて緑を残す、というのは照葉ならではでしょう。

――今後、「香椎照葉」に移り住む方に一言いただけますでしょうか。

殿元先生: 照葉は環境にすごく恵まれている、子どもたちがのびのびと過ごせる地域です。将来、社会に貢献できる人間性が豊かな子どもの育成、安心できる開かれた学校づくりを目指しますので、こちらに住まわれる際にはぜひ一緒に子どもの成長を見守っていきましょう。

隈本先生: 発展・進化している新しい街です。新しい住民・家族がこれからも増えていく街ですので、遠方から引っ越される方も地域に馴染みやすいと思います。学校には地域の方々や、保護者の方同士をつなぐ役目もあると考えていますので、安心して照葉に引っ越してきてください。

「照葉小学校・中学校」
「照葉小学校・中学校」

「照葉北小学校」
「照葉北小学校」

殿元先生と隈本先生
殿元先生と隈本先生
殿元先生(左)と隈本先生(右)

照葉小学校・中学校 校長 殿元先生(左)
照葉北小学校 校長 隈本先生(右)

福岡市立照葉小学校・中学校
福岡市立照葉北小学校
※この情報は2020(令和2)年9月時点のものです。